失敗から学ぶ塗装事例①|適切な塗料選定の大切さとリカバリーについて
塗装した後の不具合は誰もが避けたいところです。
施主さまの不満はもちろんのこと、請け負った塗装屋さんも材料のほかに人件費で費用を見積もっていますから、一度塗ったものをやり直しとなれば大赤字になってしまいます。
今回は私たち社屋の【コンクリートブロック塀】を塗った後に起こった不具合を、実際の写真と併せてご紹介します。
現場での適切な塗料選定がいかに大切か、少しでもご理解いただけると嬉しいです。
目次
塗装事例①コンクリートブロック塀塗装の不具合
お恥ずかしいですが、こちらが弊社の外部ブロック塀の一番ひどい状態の箇所です。
ご覧の通り、塗膜が下地から剥がれて素地が見えています。
剥がれがひどい部分は、このように手でベロンとめくれます。
一部、水が入って藻やカビが発生した部分もあります。
ではなぜこのようになってしまったのかを詳しくみていきましょう。
塗装事例①施工の環境や実際に当時使用した塗料について
現場の状況をまとめてみます。
塗装現場の環境
隣家との敷地を隔てる、外部コンクリートブロック塀です。
つねに風雨や日光にさらされる環境にあります。
敷地境界にあるため弊社側の面は塗装できますが、隣家側は無塗装のままです。
当時使用した塗料
- フィラー(溶剤)
- ファインパーフェクトトップ(溶剤) 2回塗り
塗装事例①なぜ問題が起きてしまったのか
では、なぜこのような状況になってしまったのでしょうか。
その原因は「雨水」によるものです。
コンクリートブロック塀は外部にあるため、常に風雨にさらされています。
さらに隣家側は塗装できていないため、ブロック塀の片面から水分が入り込んできます。
そのうえで、今回の下塗りは「フィラー」、上塗りは「溶剤塗料」の組み合わせでした。
そのため押し上げる水分から塗膜が耐え切れず、ベロンと下地から剥がれる事態になってしまったのです。
なお現在の状態は塗装後10年ほど経っていますが、3年目ぐらいからすでにこの状態が起きていました。
シーラーとフィラーの違いについて
下塗りで使用される「シーラー」と「フィラー」はどのように違うのでしょうか?
シーラーの役割
シーラーとは下塗り剤のことで、主な役割は「上塗りとの密着性を高める」ことです。
サラッとして水っぽく、色は透明か白色なのが特徴です。水性や油性、1液や2液など様々な種類があります。
塗装面に浸透して補強するタイプもあれば、半造膜で上塗りの過度な吸い込みを抑えるタイプもあります。
フィラーの役割
フィラーはシーラーと同じように下塗り剤ですが、主な役割は「目止め」と「塗装面を平滑にすること」です。
シーラーよりもトロッと粘性があり、ローラーを動かすのも重たい感じがします。
塗装面に小さなクラックがある場合などは、クラックを埋めた後にフィラーを下塗りして平滑にし、その後上塗りで仕上げます。
巣穴の多い砂骨ローラーでフィラーを塗って、外壁にパターン(模様)を付けることもあります。
塗装事例①どのように塗装すべきだったのかと今後の解決策
では、今回の事例ではどのように塗装すべきだったのでしょうか。
一番は「ブロック塀の隣家側面が塗装できず剥きだして、雨水がはいりこむ状況だったこと」です。
この状況で塗装するのであれば、浸透性と透湿性を考えるべきでした。
つまり、塗料としては「浸透性のシーラー」と「水性の上塗り塗料」が適していると言えます。
もちろんそれでも剥がれ・膨れがおきる可能性はありますが、早々に現在のような状況にはならかったのではないか、と思います。
今後の方向としては、スクレーパー等で剥がれる部分は全て剥がし、しばらく晴れが続いて内部の水分が蒸発しきった後で、上記のシーラーと水性上塗りをすることになります。
今回の塗装事例はブロック塀でしたが、住居等の外壁でも同じような状況が起こる可能性はあります。
例えばサイディングボードでも、建物の作りによっては軒や庇が狭かったり、笠木の雨仕舞が悪かったりすると、なんらかの理由で外壁に雨水がまわってきてしまうことがあります。
外壁に雨水がたくさん染みこんでいる状態で、さらにその環境が今後も改善されないのでは、「塗装だけで建物・壁の傷みをなんとかする」のは正直不可能です。
ただ、雨仕舞の物理的な問題を応急処置したうえで、当面の見た目をきれいにしたいということであれば、今回のような塗料も選択肢に入るかと思います。
よく現場の状況を見ずに「使い慣れているから」「〇〇のほうが良いと聞いたから」「手元にちょうど塗料があるから」で塗ってしまうと後々クレームに発展することもあり得ます。
その時々の状況にあった塗料の判断をするのが重要です。
「どうすればいいだろう」と判断に迷ったときはぜひ、建築に詳しい塗料の専門家にご相談ください。
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